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第五話「波際」 

* * *

汽笛が鳴ったので、僕は発車だと思った。
寝待月夜に影深く、確かそんな夜だった。遠く薄暗く姿を残す灯台跡の彼方、水平線を見遣る。
―――夜の海には近づかない、近づきたくないの。私の身体を連れていってしまうから。ほら、夜風が吹くでしょう。綺麗な細波(さざなみ)。母を飲んだこの海、父もすぐに溶けてしまった。不思議ね、淋しくなんてないけれど呼ばれている気がする。私ね、海嫌いなの。


それだから、という訳ではないのだが、決してないのだが波際に佇む彼女の背に僕はふと声をかけてしまったのだ。

―――儚げだね。
ぽつり。水面に揺れる月光に彼女は言葉を乗せたのだろうか。
彼女。
夜風

波足。

彼女。

彼女。
ああ、思えば確かに僕はこの時触れていたのだ。美沙の四肢の奥深、虚心に残る僅かな覚悟を。ただそれを慮るには僕はあまりに幼かった。

―――また流れるの、きっと。
欠けたチークケースの蓋を海背に浮かべ、彼女はそっと膨らみかけた腹に手を置いた。不思議と同情の念はなかった。この世の穢を知らぬままに生涯を閉じるその子がややもすると羨ましくすらあったのかもしれない、父となる人間を思えば尚のことであった。

二度目の汽笛が鳴る。音もなく帰路についてゆく彼女を引き留める術をこの時僕は持ち合わせてはいなかった。

僕は独り、汽笛と夜を明かした。

* * *

一層、影深い寝待月の夜。
慣れない歩幅で駐車場へと向かう鷹岡と美沙。
去り際僕はそっと美沙に耳打ちをした。

「海、いこうか。」



汽笛が鳴ったので、
僕は発車だと思った。

また隧道(トンネル)であるということは、
なんとも自由の束縛である。

樹々は野に立っている、
従順な娘達ともみられないことはない。

空は青く、飴色の牛がいないということは
間違っている。


僕の眼も、青く、大きく、哀れであった。



中原中也『(汽笛がなったので)』
より一部抜粋




いやー長ったらしいですね。夏休みもそうありたいもんです。
缶チューハイ2本でここまで厨二アクセルベタ踏みでいけるから恥ずかしいです笑笑
北海道はまた叙々に夏から遠ざかっていく感じの季節になりそうですね
あ、結メンは旅行者多いからまだまだ暑い夏を過ごすのが多数派かもです
微妙な夏風邪とかひかないように気をつけましょうー

(あとで恥ずかしさのあまり死にたくなってもいいように匿名でお願いします笑笑バレそう)

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